ごきげんようですね。
先日、宣言した通りに『呪詛』を観ました。
観る前から、あまりの怖いという評判に悩まされました。こんなに多くの人が(しかもホラーソムリエと呼んでも差し支えがなさそうな方々が)口を揃えて「とてつもない怖さ」と言ってるんだ……僕が観ても平気でいられるのか?
ちなみに僕はだいたい30本ほどのホラー映画を楽しんできました。
ぶっちゃけ、ちょっと怖いと感じても笑顔で楽しめましたし、トラウマになったり気分を悪くしたりということはありませんでした。恐怖を煽るような表現も、役者さんたちの凄さや演出の良さに感動できるぐらいの余裕があるほどです。
ホラー映画好きとしてはまだまだひよっこですが、この僕が映画本編を観る前に恐怖を感じるなんて――この映画は異質です。
僕が恐怖を感じた理由のひとつとして、この映画が観た者を巻き込むお話だったのがあると思います。
『呪詛』は主人公(ルオナン)がカメラを回していました。自分の娘を助けるために、映像を残して呪いを解く手かがりを探っていく――主人公はカメラのレンズを通して、僕たちに語りかけているのです。そして僕たちはまんまと、この映画の仕掛けにかかり、主人公・ルオナンと共に呪文を唱えてしまう。
僕がこの映画を観る前に観た人が呪いにかかり、それをまた伝えていくことから滲み出る恐怖を感じ取っていたのだと、この映画を観終わって考えるようになりました。
ある種、都市伝説などの怖さに似ているかもしれません。どんなに怖い話が存在していたとしても、それを耳にするのがたった1回だけだったら、日常生活に忍び込んでくるほど怖くはありません。でも、別々の人から何度もきいたりしたら、より恐怖感が増すのではないでしょうか。集団心理と言いますか、多くの人が「怖い」と口を揃えてこの映画を薦めてくることは恐怖でした。
この映画はプリンを食べながら観たのですが(僕はヘタレですごめんなさい)、プリンという、映画の世界から僕の意識を何度も現実へと戻してくれる存在がなければ、この映画を観きることは難しかったのかもしれません。
僕たちを守ってくれる(ってルオナンが言ってた)印が何秒も僕の視界から消えてくれなかった。これも凄い怖かった。僕は性格が悪いのでルオナンのお願いには最初から疑いを持っていました。もちろん、この印が呪いをまた拡散するものだとは知らなかったですが、異質な怖さを煽ってくれました。
あと、恐怖がやってくるタイミング――たとえば老師の奥さんが襲ってくるタイミングなどは予想していても、実際の映像は数コンマでもずらしてきました。勘違いかもしれませんが、他の作品と時間の使い方が違うのかもしれません。
それから、この作品に対する恐怖は怒りと繋がっているかもしれません。理不尽に対する恐怖と怒りはすごい近いところにあると思います。僕はルオナンが嫌いです(ごめんね)。別に彼女に騙されてなくても、嫌いになったと思います。窃盗しちゃうところとか大人として責任を持った行動ができなさそうなところが嫌いです。特に最後の方はルオナンに理不尽な目に遭わされてるんですから、彼女を憎くなった人が多いと思います。僕は中盤からルオナンへの憎悪と、それに伴うある種の怖さを感じました。「この人、次はなにするんだろう」みたいな感じですね。
物語の結末はなんとなく、中盤から予想できていましたが、予想できたからといって恐怖が消えないわけではありません。
「明日から、いやこれからどうやって生きようかな」と軽く考えるほど、怖かったです。呪いが本当にリアルに感じられました。今だってニコニコしてますが、「呪いが本当だったらどうしよう」って頭をよぎります。
この映画には両手を挙げて全面降伏です。
本当に怖かった。
文句をつけるとするならば、6年前の巫女が再び登場したことは都合が良すぎるんじゃないかなと。
それ以外の恐怖の演出は本当に素晴らしかったです。
また後ほど、大黒仏母についてなど、無責任にてきとうに語ります。