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ヘタレの『女神の継承』甘口レビュー(ネタバレ有)

 映画館で『女神の継承』を観て来ました。

 「映画史上最恐」と言われるのも納得の怖さでした!

 モキュメンタリ―風なのもあって観てるだけのこちら側にも迫ってくるようなホラーです!!

ポストカードは桂正和氏の作

 序盤は舞台のタイの雰囲気を楽しめるのですが、ここですらBGMがちょっと不気味でした。じめじめと湿気の高そうな雰囲気が伝わってきます。

 僕は巫女のニムさんの堂々としたお姿に惹かれました。

 ニムさんは姉の代わりに一族の女神であるバヤンに選ばれ、巫女として人生を歩みました。救いを求める人々に力を貸し、バヤンを深く信仰しています。

 タイにおいて多くの方が仏教徒上座部仏教)だそうですが、日本と比べると信心深い方が多そうです。中にはキリスト教の方もいるそうですが、ミンの母親は巫女になる運命から逃れるためにキリスト教を信仰してましたね。

 仏教と、ニムさんが信仰する精霊の世界は異なりますが、この作品からはタイの宗教観を感じ取れます。のどかな村に寺院などの建物があり、異国情緒を楽しむことができました。

 

 いや~この作品は本当に怖かった。

 呪術バトルってきいていたのですが、『来る』みたいな気分が高揚する呪術エンターテインメントを期待してたんですよね。

 祈祷シーンはかっこよさも感じますが、何が起こるか分からず、とっても怖い。高揚するどころか、不安でいっぱい。

 ニムさんの信仰するバヤン像の首が切り落とされた時の絶望感は非常に深い(不快)でした。バヤンはニムさんの全てといっても過言ではない。あんなにクールだったニムさんが泣き叫び、取り乱すシーンは何とも言えません。バヤンの首が切り落とされてもなお、ミンの除霊に尽力するニムさん素晴らしい。

 あと、怖いといったらミン。特に大がかりな祈祷前の数日間をカウントダウンする監視カメラの映像です。この映画、雰囲気が恐ろしいですが、いかにもなビックリさせるシーンが少なかったんです。しかし、いきなりのジャンプスケア! あっち行ったと思ったミンの恐ろしい顔面がスクリーンにドン!!

 ジャンプスケアとは

 大きな怖ろしい音や急激な画面の変化で驚かせる、ホラー映画の手法みたいです。いきなり目の前に幽霊が出てくるみたいな演出ですね。

 ミン家族が飼ってた犬も食べられちゃいました……。観てた方はもちろん犬の心配をされてたと思いますが、まさか生きてるまま鍋で茹でられるなんて……。断末魔を聞くのが苦しい。やっぱり犬とか猫が犠牲になると心が苦しめられますね。

 

 ここらへんでニムさんの空気が薄く感じられたんですけど、まさか亡くなってるとは。

 殺されるだろうとは予想してましたが、やっぱり悲しいですね。しかも儀式どうすんねん。せめてもの救いは惨殺されたとかではなく、眠っていた最中に亡くなったってことですね。

 

 なんと最後は壮大なバッドエンド。もう全滅。

 ここまでバッドエンドだと清々しさすらあってもいいんですが、それも無し。

 儀式は失敗どころか二次災害。

 赤ちゃんも惨殺されてしまう……。

 多くの人々の首を切り落とした夫の一族が受けた呪い。そして、バヤンに仕える巫女 になることを拒んだ母と娘……。こんなバッドエンドがまるで最初から決まっていたような。

 呪いって恐ろしいですね! 人から恨みを買わないように生きていきたいものです。

 

 大惨事の後にスクリーンに映し出されるのは、ニムさんのインタビューシーン。

 ニムさんはバヤンへの信仰が揺らいでいた。

 そもそもバヤンなんて本当にいるか分からないと。

 まさかのオチです。

 この映画は答えこそあるかもしれませんが、バヤンの存在については観る人によって意見が分かれることでしょう。

 僕はバヤンはいたと信じたい。だってニムさんは人生をバヤンに捧げてきたんだから。最初からいなかったなんてあんまりにも悲しいじゃないですか。まあ、結局バヤンが負けてしまったということになるんですけど。でもニムさんはこの悲劇が起きるまで本気でバヤンは共にいると信じてた。

 この物語をニムさん中心にして捉えると何かカタルシスのようなものを感じ取れるんですよね。切なさというかなんというか。人生をかけて信じ、仕えてきた存在を否定してしまう。自分の力も信じられなくなってしまう。

 わりと凄まじく惨たらしい話でしたが、ニムさんのことを考えると胸がキュンとなります。

 悲しい話でしたが、みなさん、死後は安らかであるように祈っています。

 

 僕のブログにしては少々長くなってしまいました。

gaoshungaogao.com

 人生で初めてホラー映画を映画館で鑑賞しましたが、とっても堪能できました。

 ポップコーンも美味しかったし。

 また別のホラー作品も映画館で楽しんでみたいと思います。

 

 そして僕の好きな登場人物であるニムさんに祈りを捧げます。